【7】限られた空間

 

工事が始まり約1か月半が経過した頃、透け透けだった蔵は見納めとなりました。蔵の周囲に、漆喰を塗るための下地となる石膏ボードが張り巡らされたのです。完全な壁、というわけではなくまだ仮止めの状態ですが、石膏ボードが入ることで一気に建物感が増した気がしました。小さくてちょっと暗めな蔵の雰囲気、再来です。

いよいよ内部の細かな作業が始まる段階となったわけですが、ここからは新築を建てるときと似たような内容になるかもしれません。ひとつ大きな違いを挙げるとすると「あらかじめ建物の高さと空間が決まっている」ことでしょうか。

これについては大工さんが大変苦労されていました。「もともと蔵は人が住む目的で建てられたものではないからね~」とため息交じり。仰る通り、もとは単なる物置ですので、限られた空間のなかでどう内装を作っていくか?を考える必要があるのです。

 

 

特に「天井の高さ」はどうすることもできません。物置だった蔵の床は、土が剝き出しです。人が住めるようにするには、床板を載せるための基礎から作らないといけません。そのぶん空間が狭くなり、天井が低く感じられてしまうのです。reZOUが一般的な建物に比べて天井が低い理由はそこにあります。

「床板を載せるための基礎」とは何か、具体的に触れてみます。まずは、まっさらだった土の上に四角いコンクリートの塊が点々と設置されました。大きなレゴブロックみたいに見えます。そしてそれを頼りに木が組まれていくのです。

図面上の扉近くなど負荷がかかるポイントには、このタイミングで太い柱も新たに立てて頂きました。柱はまっすぐなものではなく「木」本来の姿が分かるような、若干でこぼこがあるものです。これについては私たちが依頼したわけではありませんが、大工さんが気を利かせて雰囲気に合うものを用意してくれました。

 

 

「蔵に泊まる」とはどういうことか?それは体験して頂くしか方法がありませんが、恐らく快適だけではない「不便とも趣とも捉えられる空間に滞在する」ということなのではないかと思います。

先述した通り天井は一般的な建物よりも低いです。特に2階は、身長170cm以上の方であれば、梁が頭と同じくらいの高さに来てしまいます。また、リノベーションを経たとはいえ隙間のすべてを完全に防ぐことは出来ません。

それでも不便さ以上に、100歳の蔵には喩えがたいロマンが詰まっているのではないかと思います。実際に私たちも蔵で時間を過ごすたび、不思議とその空間の魅力に何度も吸い込まれそうになります。

それは100年という時間の流れが、他の何にも代えがたい事実と存在だからなのではないでしょうか。ぜひこの点を私たちと一緒に面白がってくれるゲスト様と出会えることを心から祈っています。

 

 

あっという間にこんな様子