【12】魔除けの木

 

6月中旬に差しかかった頃、床板がはめ込まれ始めました。とはいえ床板をはめ込むスペースはたくさんあるので、まだまだ始まったばかりですが。

床板については、どんな木材を使うか夫婦でよく話し合いました。大工さんに見本とカタログをご用意頂いたり、自分たちでネット上を散策したりもしました。

一番気にしたのは、木の種類です。桜、栗、松、オーク、ウォールナットなど種類によって見え方が全然異なるので頭を悩ませました。また、種類が決まっても塗装をするか、無垢材のままでいくかなど更に迷うこともありました。小さな板一枚の見本があってもなかなか床全体のイメージをするのが難しかったです。

大工さんは私たちに判断を一任して下さっていたので「決めてもらった木材でいくよ」というスタンスでいらっしゃいました。きっと大工さん個人の意見はあったと思いますが、あくまでそこは持ち主の意見重視ということでした。

 

 

結局私たちは1階には「桜の木」、2階には「栗の木」を選ぶことにしました。

桜はうっすらとしたピンク色で、明るい印象が特徴的です。1階は特に水回りが多く床板のダメージも気になったので、塗装をして頂きました。栗は無垢材のままで、少しざらついた木本来の手触りを楽しめます。灰色と茶色を混ぜたような、落ち着いた雰囲気の色合いです。

そのようにしてようやく選んだ床板が蔵にはめ込まれていくと、やっぱりイメージと少し違ったりするものですね。桜はより明るく見えましたし、栗はより渋く見えました。ですが、何度も見ているうちにこの木にして良かったと思える納得感が芽生えていきました。

 

 

そうこうしているうちに玄関口のかたちも見えてきました。玄関は真四角ではなく「台形」をしています。実はこれ、とてもすごいことなのだそうです。

何故なら大工さんによると、台形のように木を斜めに設置するのは非常に面倒くさいことだからです。つまり台形型の玄関作りは、とても厄介な作業であったことになります。少しの狂いもなく、ピタッと木がハマっている様子を見ると大工さんが苦労されたことが伝わってきます。

ちなみに玄関のフチには槐(エンジュ)の木を使ってもらいました。エンジュの木は簡単に言うと魔除けの木です。「延寿」や「縁授」とも書けることから、長寿、安産、良縁、幸せの木としても知られています。

これからたくさんの人が出入りする玄関に魔除けの木を使って頂くことができて、とても有難かったと思っています。古い家の間取りや方角には意味や理由があると聞いたことがあったので、もしかしたら玄関の素材にも各種言い伝えがあるのだろうかと興味がわきました。

 

 

台形型の玄関とエンジュの木