蔵の工事には、それぞれの得意分野を持ったプロフェッショナルが数多く関わってくれました。
例を挙げてみます。まずは何と言っても、蔵自体を正しく蘇らせてくれる大工さんです。
他には、水道と配管を仕上げてくれる水道設備業者さん、コンセントの設置や電気配線を担当してくれる電気設備業者さん、屋外と屋内の壁に漆喰を塗ってくれる塗装屋さん、ガス配管設置とボンベの開栓を行ってくれるプロパンガス屋さん、登記変更を担当してくれた土地家屋調査士さん――。
数え切れないくらいの、たくさんの技術者の方々が蔵の工事に携わってくれました。ここでは水道と電気のことを少しだけお伝えしてみます。
蔵はもともとただの物置でした。地面は土で、床もありません。電気はかろうじて母屋から来ていたものの、トイレ、風呂、洗面、キッチンなど水回りは一切なし。そこからのスタートでした。
何もない更地にどのように水道関係の設備が作られていくのか、とても興味が湧きました。実際に工事の段取りを見学してみると「こうやるのか」と面白かったので、ここで少しだけ紹介してみます。
水道は主に二つのことを考えると分かりやすいと思います。ひとつは上水。水がやってくる出どころのことです。そしてもうひとつは下水。汚水が流れていく場所のことですね。
私たちの場合、母屋の方から上水を引っ張ってくる必要があったので、あるポイントまで地面をひっくり返して配管を埋め込んで頂きました。草が生えていた地面が全部いったん掘り起こされたので、自然と耕された感じになりました。
水色の配管からは冷水が、ピンク色の配管からはお湯が出るみたいです。色が分かれていたので、すぐに分かりました。仕事柄このような現場に立ち会わない限り、なかなか見られるものではないと思ったので、その光景をじっくりと観察してしまいました。
下水については、ここは下水道がない地域のため、浄化槽(家庭用のミニ浄水場みたいなもの)を設置します。汚水が通る水道管は、地面と床板の間に生まれたスペースに収まるようです。配管はグレー色でした。水道管といえば金属製をイメージしがちですが、現在はポリエチレン管などが用いられるみたいですね。
ここまで水道のお話をしてきましたが、電気もなかなかに複雑なことをやっていらっしゃって、感心しました。
コンセントの位置に合わせていくつもの配線が、ぶらんと天井からぶら下がっています。ところどころ壁にホチキスみたいなものを打って、配線がいい感じに壁に這うようにされていました。
必要があれば、配線が見えない工夫もされるそうです。例えば、2階の梁の一部には丸くて小さな穴が開けられたのですが、それは配線が丸見えにならないような配慮なのだそう。確かに配線が見えているのと、いないのとでは、印象が全く異なりますよね。