蔵を改装すると決めたときから、蔵は宿になることが決まっていました。そのためリノベーションするにあたり、一般的な家というよりも「宿向き」になるかどうかが重要でした。
そこで大きなテーマとなったのが「収納をどうするか」でした。住むわけではないので一般的な家よりは収納は少なくてよい、しかし全くないのは困る、という感じです。
宿を運営するにあたり、寝具類と掃除用具を収納する必要最低限のスペースはしっかりと確保するのが望ましいです。
特に温暖な地域でない限り、冬の掛ふとん等かさばるものも必ず出てきます。私たちの場合、枕も90cmと大きなものを使っており、枕もサイズによって収納スペースの占領具合が変わってきます。
そんな事情をお伝えしつつ、大工さんに設計をして頂くことになります。しかし、ここまでの記事でも何度か触れてきたように、もともと蔵は人が暮らすように出来ていないため、全体のスペースに限りがあります。小さいのです。
宿を営むにあたり必要になる最低限の収納。蔵の限られた空間。この二つのバランスが問われました。
結局、収納については、三か所作って頂くことになりました。
各部屋に一つずつ、そして1階の廊下に一つです。その他にも、トイレ内に、扉はないものの収納用に活用できる空間を生み出して頂きました。これだけあれば十分です!
収納スペースってどこに、どうやって作り出すんだろう?そんな素朴な疑問がありました。毎日のように進んでいく工事の様子を見ながら、勝手に見学させてもらいます。
一番面白い!と思ったのは、2階の収納でした。そこは数学で言うところの角(かく)を利用して作られていたのです。角(かく)とはざっくり言うと、平仮名の「く」の字の内側に生まれた空間のことです。
このように、2階の収納は角(かく)を利用して作られた収納スペースのため、三角形をしています。つまり手前は広く、奥にいくにつれ狭くなっていきます。珍しい形だと思いました。
また、トイレの収納スペースが生まれたエピソードもご紹介しておきます。トイレは階段の真下に作られたため、2階と同じく角(かく)が生まれたのです。そこを利用して収納が可能になりました。
大工さんがどこまで奥に行く?とわざわざ聞いてくれたので、一緒に相談しながら決めました。あまり角(かく)の奥に行っても頭がスレスレになってしまうでしょ、とのことだったので、ちょうど良さそうなところで区切りをつけました。
宿の収納扉の開け閉めは「STAFF ONLY」となっていますが、もし建築に興味がある方がいらしたらお声がけください。扉を開けて中をお見せいたします。